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国内のマッチ市場は、約100分の1にまで縮小したと報じられています。

そのなかで、1923年創業の老舗メーカー・日東社(兵庫県姫路市)は、長年つくり続けてきたブックマッチ(紙マッチ)に区切りをつけ、1箱500円という価格のマッチを打ち出しています。「量で戦えない市場では、価格と価値を再定義するしかない」——この判断の背景と本質を、縮小市場・地方・ニッチ領域で事業を営む方々と一緒に読み解いてみます。

100分の1の市場で何が起きているか——日東社の選択

東洋経済オンラインの報道では、マッチの市場が100分の1に縮んだことが伝えられています。背景には、喫煙人口の減少と、ライターの普及があります。

この状況に対して日東社が選んだ方向は、「より多くを、より安く売る」ではありませんでした。同社は、国内で唯一つくり続けていたブックマッチ(飲食店などに配る販促用の薄型マッチ)の生産を2022年に終えています。一方で、箱入りの木軸マッチはつくり続けており、「100均にもあるのに1箱500円」という価格で勝負する姿が報じられています。

縮小する市場全体のパイを争うのではなく、「この価格でこの品質を求める人」という小さくても確かな層に向けて、単価と体験の質を引き上げる。それが、日東社が歩んでいる方向だと読めます。

報じられている範囲で整理すると、次のようになります。

  • 量——ブックマッチは、1970年代初めに始めて約49年続けた事業。需要は喫煙人口の減少とともに大きく減りました
  • 価格——ライターや100円ショップの商品と並ぶなかで、あえて1箱500円という価格を打ち出しています
  • 意味づけ——日々の消耗品としてではなく、手に取る理由のある一品として届けようとしています

売上の「数字」だけを見れば縮小です。しかし、数字を追って安さで戦うのではなく、「誰に、どんな理由で選ばれるか」を組み直そうとしている。ここに、縮小市場での戦い方のヒントがあると感じます。

「何を売らないか」が戦略の核心になる理由

小規模事業者の経営で最も難しい判断のひとつは、「断ること」です。売上が読みにくい時期や、市場が縮んでいる局面では、来た仕事をすべて受けたくなる気持ちは自然です。でも、それが結果として「誰に向けた事業なのか」を曖昧にし、価格競争の入り口になることがあります。

日東社の事例が示しているのは、「何を売るか」と同時に「何を売らないか」を決めることが、事業の輪郭をつくるという点です。長年続けてきたブックマッチに区切りをつける判断は、短期的には痛みを伴うはずです。しかしその判断があってはじめて、「この価格で選ぶ人に届ける」という文脈がはっきりしてくるのだと思います。

Note

「選択と集中」という言葉はよく使われますが、実際に何かを手放すことを伴う判断は、掛け声とは全く異なる重さがあります。日東社の場合も、主力だった事業に区切りをつけたことで、残る事業への投資と意味づけがしやすくなったのではないか、と読み取れます。

あなたの事業を振り返ったとき、「惰性で続けているが、本来の強みとは少しずれている」という仕事や商品・サービスはないでしょうか。それを整理する作業は、撤退ではなく「本来届けたい人に、より届けやすくする」ための準備かもしれません。

縮小する市場で生き残った事業者に共通して見えるのは、以下の3点です。

  • 「この価格では受けない」という基準を自分で持っている
  • 顧客を絞り込むことを恐れていない(全方位を狙わない)
  • 量ではなく「誰に届いたか」で手応えを測っている

これらは必ずしも「大きな覚悟」や「ドラマチックな転換」を要するわけではありません。日々の小さな受注判断や、価格設定の見直しという形で、少しずつ実践できる視点です。

Column by 丸山カズタカ

「安くしない」は逃げではなく、覚悟の表明だと思う

正直に言うと、この日東社の話を読んだとき、他人事とは思えませんでした。石垣島でEnowa.をやっていると、「東京の事務所と同じ料金でいいんですか?」と聞かれることがあります。地方にいるから安くて当然、というニュアンスが含まれていることも、たまにあります。

どういうことかというと、「地方にいること」「規模が小さいこと」「市場が狭いこと」は、それ自体ではサービスの価値を下げる理由にはならないんです。むしろ、石垣島という場所で、目の前のクライアントと一対一で向き合える距離感こそが、私が提供できることの核心だと思っています。

日東社が長年続けてきた事業に区切りをつけ、「この価格で選ばれる」方向へ軸足を移したように、私も「やった感だけを売る仕事」は引き受けないと決めています。成果が見込めない施策を、「とりあえず動いてる感」のために提案することはしない。それは相手の時間とお金に対して誠実ではないから。

高いものには理由がある。安くないことへの説明責任を果たすこと。それが小規模事業者としての矜持だと感じています。価格を守ることは、自分の仕事の意味を守ることと同義ですよね!

縮小市場のなかで生き残る賭けをした日東社の話は、「量を追えない者が、いかに価値で立つか」という問いを私たちに投げかけています。答えは一つではないけれど、少なくとも「安くすること」が唯一の選択肢でないことだけは、確かだと思います。

丸
丸山カズタカ
Enowa. / 石垣島在住 / デジタル実装パートナー

まとめ

  • 日東社は、100分の1に縮んだと報じられるマッチ市場で、ブックマッチの生産を終え、1箱500円という価格の商品で勝負する方向へ軸足を移した。
  • 「何を売らないか」を決めることが、縮小市場での価値の再定義と、適切な顧客層への訴求力を生む。
  • 価格を下げることは戦略の一つではあるが、唯一の選択肢ではない。「誰のために、何を、なぜ届けるか」という軸が、価格設定の根拠になる。
  • 小規模・地方・ニッチという条件は弱点ではなく、絞り込みの起点として機能しうる。

市場が縮んでいるとき、焦って手を広げるより、自分の事業の「なぜ」を問い直す時間の方が、長い目で見て実になることがあります。日東社の選択が、あなたの事業の棚卸しを考えるひとつのきっかけになれば幸いです。

参考:東洋経済オンラインの記事

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